HEARTBEAT/小路幸也


HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)


微かに微かにミステリ・フロンティア特集中。何も知らないで読みました。「約束と再会の物語」と書かれていたので、青春ものかぁ、と舐めておりました。えぇ、最高でしたっ。



大好きです。もう、読み終わった瞬間にジタバタしてしまったくらいに、良かったです。素晴らしい。話は「十年後に会おう」と約束した不良少女と優等生。の、優等生視点で話は進みます。十年後、態々NYからやって来たのに不良少女だった「ヤオ」は姿を見せない。しかし、代わりに旦那だという男が現れて「ヤオ」が失踪したと告げる。どうしても「ヤオ」に逢いたい主人公は、同級生だった「巡矢」に手伝ってもらうことを思いつき…。そして、もう一つの視点では豪邸に住む病弱な少年のまわりにも不穏な雰囲気があり…。結構交互に入れ替わっていきます。雰囲気が全然違って、書き分けがしっかりしてます。すごい。視点が大人と子供、といったところもあるかもしれませんが。
でも、でもですね、私の書くあらすじなんて、正直なーんも伝えちゃいないんですよ。言いたいことはあるけれど、ネタバレになること確実なので自粛自粛。とりあえず、素敵。大好き。読んでいる時はそりゃ熱中はしてたけど、こんな感じかぁ、と星で数えりゃ四つくらいなところだったんですよ。でも、最後の言葉で墜落しました。
一瞬「えっ」と懐疑的に思ったところから「あっ」と思わせてくれました。で、登場人物たちが良いんですよ。私が好物とする個性的な人々では全然…ないこともないか。でも、どちらかというと普通の人たち。豪邸に住む子供だったり、「巡矢」もハリウッドからお呼びが掛かるほどのプロのCGデザイナーだったりするのだけれど、「居る」と思わせるだけの描写力があります。背景がしっかりしてるんだなぁ。捜査をしていけば色々と浮かび上がってくるけれど、落ち込んだりグチグチ悩まないところが、読みやすくもあり雰囲気が素敵。それ故にしんみりとした場面を際立たせてくれる。
で、出てくる人の心理がとても素敵。子供たちについては明るいというか、ハキハキしている部分があり過ぎて、目を丸くするところもありつつ、大人側については…もうっ。もうっ。言葉に出来ないっ。
謎についても筋が通っているし、それだけの迫力と説得力がありました。「巡矢」はビックリするぐらいに探偵向きだと思います。それか、詐欺師か。あ、そもそもの設定に「?」を浮かべちゃダメです。だって、そういうもんなんです。そういう舞台の元で話が進むので、突っ込むのは今更、といったところ。十年、っていう時間がいい仕事をしてくれてます。それと、細かいところはある種の衝撃でどうでも良くしてくれます。
最後の一文、というものの凄さを思い知らせてくれた本でした。とても良い余韻を持つ物語です。