ホームタウン/小路幸也


ホームタウン

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「HEARTBEAT」(記事はこちら )で私の心臓を打ち抜いた作家さん。結構いっぱい本を出しているのですね。




親をとある理由によって亡くした兄妹の「兄」の方が主人公。有名デパートで「監査」っぽい事をやりつつも、赤の他人であるおばあちゃんとその孫と一緒に暮らしています。そして、ある日妹から「結婚する」という手紙が届いたのだが、その後、妹は失踪し…。
何だか妙にあっさりと読めてしまった作品です。…ただ単に私の集中力が運よく高まってただけかもしれませんが。ま、ミステリーではあるのですが、謎解きものとしては普通。凝っていたり、ものすごく驚く、ということはありません。ただ、その分、というのも変ですがキャラクターが魅力的です。
とりあえず、続編書かないかな。いえ、話としてはきちんと終わって、なおかつ微妙に最終目的も果たされてしまっているわけで、消化不良なんて全然ないのですが、この人たちの話もっと読みたいよっ。むしろ、脇役たちの話が読みたいよっ。
カッコイイんですって。ずっと「監査」をやってる「カクさん」とか、ヤクザを首になったヤクザとか、繁華街の菓子屋の兄ちゃんとか、明らかに怪しい職業の同級生とかっ。一々素敵です。せめて、せめて、仲良くなったあの二人の話をっ…。
思えば謎に関わるのに出てくるのは「必要悪」なので、善悪のバランスがかなり好い気がします。
さて、それは脇役の話はそこらへんにしといて、主人公についてになると、少しアッサリした性格な気がしますが、そうでもないと本当にやっていられないのだろうなぁ。設定だけを取り出すと、結構人が錯乱してしまうような設定ですもん。主人公と同じ立場になっていたら、まっとうでいられる自信はない。うん、でも、この人に性格好きです。
話としては「家族」がキーワード、かな。ちょっくら妹の言動にクラクラっとしないこともないですが、ちゃんとそれには裏づけがあるわけで。色々と出会った経緯などが不思議な気もするけれど、ま、文句を言ってもしかたがない。それと、この作家さんはそういう恋愛関係が好きなのか。いえ、良いのですけれどね。
設定だけを追っていくとかなり深刻な話なのですが、そういう匂いを感じさせない、いい意味でも悪い意味でも「流れがきれいな話」です。さ、この人のほかの本を借りてこよっと。