そこへ届くのは僕たちの声/小路幸也


そこへ届くのは僕たちの声

そこへ届くのは僕たちの声


てっきりミステリーかと思っていたら、SFでした。…もしかして、この作者はSF系の人なのか。一瞬、読んでて「OKAGE」を思い出しました。あれも、ミステリーだと思ったらSFだったんだよなぁ。




話は植物状態の人間を起こすことが出来る奇跡の人と、子供たちに間に起こっている奇妙な誘拐事件を繋いでいこうとするところから始まります。えっとですね、話の大筋は置いておいたとしても、ものすごく「偶然」が多いです。出てくる大人たちは記者やライターや元警察なので「偶然」っていうのは恐ろしい、むしろそれは「必然」だ、という論を使うのですが…。それにしたって「偶然」過ぎるだろうがっ。私はこれをミステリーとは認めませんよ。ひとつもミスリードがないって、そんな馬鹿な。全員が簡単に繋がってしまう関係を持っていたなんてっ。結局、何本かの糸があるのですが、それがごしゃごしゃごしゃと絡まって、結局ひとつの小さな玉にまとまります。うん、無関係の人間が一人もいないって、どうなのよ。…そういう話なんだな、ってことで納得しておくことにします。そこで引っかかっちゃ、もうダメなんだ、きっと。

それと、もうひとつ判ったのは、この人が書く子供に「無気力」とか「怠惰」とか「意味のない破壊衝動」とかは宿っていないのだな、ってこと。そりゃもう、言い方悪いけれど、清く正しい感じが、まばゆいまでですよ。

読んでて思ったのは、映像化してくれないかなぁ、ということ。面白いかどうかか置いといて、そっちの方が話がスッキリまとまって、わかりやすいと思うんだ。えっとですね、植物人間を起こそうとしていたのに、その事件が解決してしまっていたり、誘拐事件の子供たち本人へのアクションは薄いわ…、なんというか、全体的にチグハグなんです。最終面に入って、仲間が急激に増えてしまうのも、少し興ざめでした。わかってはいる。その仲間の繋がりがすんごい強いことはわかってはいる。けど…いきなり愛着持てというのも無理で、なおかつ、実はあんまり愛着持って欲しくもなかったんじゃないかなぁ、と思う。…さらに言い方が悪いですが、扱いが雑ですよ。

すごい、チグハグなんです。それこそ最初のミステリー風味からSFにぶっ飛んでしまうから。確かに、最終局面でかっこいいのはわかるし、彼らの必死さもわかります。でも、入り込めなかった。まるで、途中から映画のフィルムを見ているように感じたのですよ。謎が判明した瞬間、別の話が入り込んできた感じ。ま、謎自体も納得できるか、と言われると少し微妙です。説明されたから、わかりました、で終わらない。…まるで、最初の段階が書きたいがためにわざとこういう設定にしました、といった感じ。でも、…最初の段階にそんなに惹かれないし、なぁ。

確かに「ハヤブサ」はかっこよかったです。というか、私のツボな設定なのですよ。でも…何かがいまいち。

ただ単に、私はこういう「清く、正しい、真面目」な子供たちが苦手なのかもしれない、なぁ。感情移入なんて出来ない。…ファンタジーとして読み直せば、楽しいのかもです。そしたら、きっとこの子供たちの性格だって好きになれるさ、うん、きっと、たぶん。それと、助けてくれた人に対する感動的再会はなくてよかったのか…おい。

……微妙な話でした。