くまのパディントン/マイケル・ボンド


くまのパディントン (世界傑作童話シリーズ)

くまのパディントン (世界傑作童話シリーズ)


たまには児童文学を。ということで、有名なクマの話を借りてきました。なんとなぁく、覚えがある気がしていたのですが、ちゃんと話を読むのは初めてなのかな。なんか、帽子の中にマーマレードのサンドウィッチを隠している印象があったのですが、実際にそんな描写はなくて……あれ?




話は「暗黒の地ペリー」から密入国したクマが、ブラウン夫妻に拾われて「パディントン」と名づけられたところから始まります。声を大にしていいます。
パディントンがかわええー!
こんなにも可愛いクマだとは知りませんでした。本人は物凄く真面目ぶっているんだけど、実はぜんぜんダメで、菓子パンで毛皮をぐしょぐしょにしてしまったり、お風呂に入って死に掛けたり(その前の時点でお風呂の中はぐしゃぐしゃ)するんだけど、でも、やっぱり本人はすごい真面目なんですよ。で、たまに反省とか…あんまりしてないな。
多分、ものすごく私にとってバランスが良いんだと思います。こういう誰かがやって来て、ドタバタ系の話ってのは結構あるとは思うんですが、私の場合、その殆どが途中で受け付けなくなるんですよ。何故って、そのキャラクターがあまりにトラブルばかりをおかすから、途中から不安になって、無駄にドキドキして、今度は何をしでかすんだ、って凄い勢いで不安になってしまうのですよ。
パディントンも確かにその例には漏れず、もうお前、何で大人しくしてるってことが出来ないのぉっ、と叫びたくなります。でも、でも、かわいいんだもん。それに、出てくる人々が厳しくも優しいのが凄くいい。ブラウン夫妻の旦那さんも一応最初はパディントンと住むことに反対するけれど、結局は「一応」だし。私のお気に入りは大家の「バード」さん。すごく気難しい人の設定なのに、クマが好きで、少しぶっきらぼうだけど、ベタベタするんじゃなくて、すごくパディントンの事を可愛がっている感じが、とても良い。
近くにパディントンを毛嫌いする人、ってのが登場しないのがこの本の良いところだと思います。たまに何かしでかしても、褒めてもらったりとかしちゃって、どんどん友人も増えてって、ビックリするようなハプニングを巻き起こすけれど、流れる雰囲気はドキドキしつつも優しいのだ。
お気に入りのセリフは、バードさんがブラウン婦人に「パディントン、この頃大人しいじゃないですか」と言った時のセリフ。「そうなのよ、だから心配なのよ!」。
素晴らしい。この関係とてもいい。心配といっても、キリキリピリピリ心配するんじゃないんですよ。見守る感じに心配しているのです。
パディントンがいたら、さぞかし色んなことが大変なんだろうなぁ、と思います。でも、それを楽しんでいる人々が、すごい素敵。クマのいる生活って、いいですよ。