青年のための読書クラブ/桜庭一樹


青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ


遅ればせながら、直木賞受賞おめでとうございます。えぇ、ニュースサイト見た時に飛び上がったのが私です。あわわわわ。…GOSHICシリーズ、続き、書いてくれる…かなぁ。




さて、話は「青年の」とついている癖に、とあるお嬢様学校が舞台です。てっきり現代学生青春もの、かと思っていたのですが、時代ごとに区切られた、五つの短編でした。構成は「読書クラブ」と言うひっそりと変わり者がよく集まるクラブの誰かが書いた、ノンフィクションの話を読者は読んでいる、ということ。閉塞的で女子ばかりの、しかもお嬢様ばかりの、奇妙な空気にゾクゾクしました。「少女とは」って雰囲気が本当によくでている。語り口としては少々独特ですが、それがまたいい。
第一話「烏丸紅子恋愛事件」は、「読書クラブ」から誕生した「ニセ王子」の物語。「王子」とは、少女たちの生活を豊かにするために選挙によって選ばれる女子、いや「青年」のこと。倒錯する少女たちがとてもいいです。そして、紅子の理解しなさっぷりがさらにいい。終わり方、好きさ。
第二話「聖女マリアナ消失事件」は、学校建設にまつわる物語。無理なんじゃない、と思うような謎だけど雰囲気に流されて思わず納得していまいます。あぁ、もう、ゾクゾクする。南瓜の世界…かぁ。一々言葉選びがステキだわ。
第三話「奇妙な旅人」由緒ある嬢様学校に現れた、バブルに乗った成金少女たちの物語。極彩色の扇子を振り回し、ぱらぱらを踊りまくるそのキャラクター性の偏りっぷりにほれました。かなり好きな話です。この時の読書クラブの部長の貫禄あるカッコよさは素晴らしい。
第四話「一番星」は、地味な少女ないきなりロックスターとなった話。その熱狂のさせっぷりと、果たして彼女が何を考えているか。スピード感がいいなぁ。そうして、そのロックスターと一番親しい部長のニヒルっぷりがたまりません。そして、何より終わり方の「あぁ、もう、しょうがないなぁ」的な微笑ましい感じが心地よかった。
第五話、最終話「ハビトゥス&プラティーク」は、未来の話、だけど、あんまり未来未来はしてないな。読書クラブの最後の一人の活躍を描いたもの。部員の活躍はアクション的というか、ワクワクドキドキの詰め合わせ。そうして、にやっ、と笑いたくなってしまう終わり方。読書クラブよ、永遠に。
書き終わってきづきましたが、これってとてもいい意味で雰囲気の小説なんです。その雰囲気にまずはまって、その奥の裏まで潜っていくことが出来るのかもしれない。うん、この独特の雰囲気、本としてきちんと完結している感じがとてもステキです。時代はまたいでいるけれど、閉塞的な女子校には関係ないってあたりが象徴的。
ちなみに、書いている人間というのはちゃんと話の中に登場するのですが、それが誰だかちょっと予想してみるのも楽しかったです。最後の話は予想すら出来なかったけど。とても「少女的」な雰囲気に溢れつつ、それをちゃんと冷静な目で見ている、素敵な話でございました。