チョコレート・アンダーグラウンド/アレックス・シアター


チョコレート・アンダーグラウンド

チョコレート・アンダーグラウンド


ここ一週間ほど、本しか読んでいない気がします。気のせいでしょうが。そろそろ食料が尽きそうです。




ってわけで、久しぶりに翻訳もの。てっきり児童文学に入ると思ってたのですが、普通の書棚にあった不思議。ま、いいけれど。話は「健全健康党」が与党になり、チョコレートや甘いものを全面的に禁止したところからスタートします。世の中に溢れるは「健全さ」や「健康」を売りにしたまずい食料ばかり。
「そんなのおかしい」と感じる少年二人が主人公。二人はチョコレート密造・密売に手を染めていき……。
密造密売には何となく金儲けの匂いが漂うけれど、もちろんこの少年二人にそんな意図はなし。二人一緒でひとくくり、ではなくてちゃんとキャラが立っているのが好感です。かわいい登場人物表もあるのですが、そんなの必要ないくらいに全体的にキャラがたってるっ。個人的にバビおばさんがヒットです。どんどん元気になっていく姿が素敵。(ただ本性が現れているだけかもですか)
物語は凸凹ありつつ楽しく、面白く、スリル満点が進んでく。安心感がないのがすごい。「どうせこうなるんでしょ」って思わせない。もしかして、本当にやばいんじゃないか、とハラハラ。登場人物に捨て駒がいないのが素敵。
で、この話、全体的に皮肉がきいてます。軍の圧力がすごいです。あの独裁者とか思い出して背筋が寒くなる。パンを踏み潰されたときやチョコレートの押収っぷりがもう、背筋がゾクゾクですよ。そういうことに歯痒い思いをしながらも、駆け回る少年たちの姿が楽しい。でも、やっぱりすこしだけダーク。ビターチョコレートみたい。
文体もわかりやすい。翻訳独特の癖がない、かな。
分厚い本ですが、かなり字の間隔が空いているからそんなに時間はかかりませんでした。ライトノベル読むよりはちょっと歯ごたえあるかな、くらいです。腕つかれたけど。
全体的に装丁がかわいい。チョコレートをイメージするこげ茶色の文字の色が素敵素敵。